top of page

たった二文字の修正を却下された話

米国首都にて開催される、とある国際イヴェント(今回はオンライン開催)にやや間接的ではありますが関わっておりまして、その中で先日大変失望させられることが起きました。


自分はそのイヴェントである日本の童謡(ジャンルとしての「童謡」は厳密にいえば定義づけがかなりきっちりしており、興味のある方はこちら https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%A5%E8%AC%A1 をご参照ください)を歌うことになった団体とかかわっており、先日楽譜や資料が送られてきました。


私はチェックしてほしいなどの依頼を受けた立場ではありませんでした。

でも、リハーサル(オンライン)にも立ち会うし、何より楽譜が送られてきている以上、内容は確認することになるのは当然の流れです。そして以下のようなことがわかりました。

まず、その曲の歌詞はイヴェントの主題には合っていない内容であること。

その原曲は、作詞・作曲ともちゃんとはっきりしていますが、そこには編曲者(日本人ではない)の名前のみが明記され、原曲については「Japanese Folksong」と書かれていること。これは間違った情報です。

また、編曲された楽譜の内容や主催者側の用意したリハーサル用のガイド音源からは、編曲により原曲の旋律やリズムが変更されていること(それ自体は編曲者の自由ではありますが)、一部の歌詞に発音上の間違いがあること(いわゆるローマ字表記から英語読みをした際の取り違え)、その周辺にリズム変更に伴う一部文字列の削除がなされ、意味が通じないだけでなく音読的にあまりよくない意味にとらえられる可能性があるような、ちょっと微妙なものになってしまっていることも判明しました。


実際、私がかかわっているところのリハーサルでは日本語話者の参加者がいましたので、ガイド音源に含まれる日本語歌詞の発音の間違いに戸惑っていましたし、こういうった問題点をまとめてしかるべき人に伝えたところ、その段階でその人(日本人ではない)は納得してくれて、主催者側に伝えるという返信が来てすっかり安心しておりました。


ですが、1週間後のリハーサルの様子で、在米国の主催者がそれらすべてを却下というか無視することにしたらしいことがわかりました(私には経緯は知らされませんでしたがそこは仕方がないです)。


状況は理解できます。すでにすべてのオンラインリハーサル用素材を作成・配布済みであり、米国内では複数の団体がそれぞれのスケジュールですでにリハーサルを開始しているので、これから修正して全員に正しい情報を伝えなおすのは困難である、という判断だったのだと思います。

それでもやはり、私はある種の怒りを覚えました。日本語歌詞の発音間違いはかな表記でいえばたった二文字、その修正案も却下されてしまった。

理由は聞きませんでした。前述のとおり「すでにそれで素材を作ってしまったから」。そして、なにより「それをわかる人はごく少数だから」。たぶんそういうことです。


怒りを覚えるってのは大げさだよ、と思うかもしれません。「日本の曲を選んでくれただけで光栄」みたいな見方も想像できます。でも私はお互いの文化を知る機会にそういう譲歩をすることには反対なんです。

第一に、国際交流として、曲目を選ぶ段階でも、編曲者がこの歌を編曲した段階でも、原作に対する情報収集や意見交換、研究などが行われていない。これって「立場が逆」でもそれですませるのでしょうか。

その曲が選ばれたのは、ただそれが「日本の歌として知られている」から。それはまあ仕方がないかもしれません。

ですが、編曲者は「すでに知られたカヴァーヴァージョンをベースに編曲してしまった」らしきこと、その際、あらためて原曲についての情報や歌詞の発音と意味などを調べなかった可能性すらあること。

そして、それがおかしいとわかってもなんとなく引き下がったり、黙ってそれを受け入れる人々がいること。

これはやはり傲慢で怠惰な姿勢だ、と自分は思いました。


私がもう少し直接かかわっている立場なら、引き下がらなかったと思います。でも、立場上、私が受けて私が回している案件ではないので、これ以上手出しはできなかったのが悔しい。


ちょっと大げさな比較になりますが・・・

映画「薔薇の名前」のコメンタリー音声で、監督が「中世なのに聖母像がルネサンス様式で仕上がってきて、作り直してほしいと主張したが、自分より映画業界でのキャリアが長い美術担当者たちに『そんなところにこだわったり区別できる人がどれだけいると思っているのだ』といったような内容で作り直すことが拒否された」という話をしていたのを思い出しました。(見直していないので細部が違うかもしれません。)

仕方なく妥協したけれど、試写の段階で「なぜルネサンスのマリア像が出てくるのだ、あなたは中世についてよく研究しているはずではなかったのか」という意見が多数寄せられたそうで、監督は今でも後悔しているけれど同時にうれしかったというようなことも言っていたのがとても印象に残っています。


これ、一応歌曲の話題なので音楽雑談ですかね・・・?まあどっちでもいいですね・・・



88 views
Recent Posts 
Search By Categories
Follow Us
  • Vimeo Social Icon
  • PixelFed
  • vivaldi_browser_logo_icon_152945
  • icons8-mastodon-is-an-online,-self-hosted-social-media,-and-social-networking-service.-96.
  • icons8-mastodon-is-an-online,-self-hosted-social-media,-and-social-networking-service_edit
  • Instagramの社会のアイコン
bottom of page