第0回
オーケストラのスコア(楽譜・総譜)を読む
いきなりですが、まずはこの動画をちょっと再生してみてください。
といっても最初から全部聴くととても長いです。43分25秒もあります。クラシック音楽ってこれだから大変…
しかもこのWebサイト提供元での動画再生は開始時間を指定できませんので、お手数ですがとりあえず33:47を手動でご指定のうえ約20秒間ほど聴いていただけますと助かります。YouTubeアプリなどからご覧いただく場合は下記リンクで開始時間指定再生されます。そういうのめんどくさい!という方は、電子音ですが下に音源がありますので、ここは飛ばしてOKです。
https://www.youtube.com/watch?v=qVA1ieo9Js4&t=2027s
*演奏者や管弦楽団は筆者の推薦という意味ではなく、オフィシャル配信であることを条件に選びました
画面や動画タイトルでご覧の通り、これはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」第4楽章冒頭部分です。
聞いたことがあるという方、聞いたことがある気がするという方、初めて聞いたかも!という方…いろいろいらっしゃると思います。
もしも「オーケストラで演奏したことがある」「スコアを持っている」「指揮したことがある」その他…詳しくご存じの方がいらっしゃいましたら…ここから先を読む必要はありません…
実はこの楽曲のこの部分についてこれからここに並べたてる内容は、なんといいますか、クラシック音楽に「詳しい」方には有名な話ですので、あちこちにこの書法の解説は出回っていますし、その分析もある程度固定しており、「そんなの知ってるよ、こういうことでしょ」と思われる方がいらっしゃることは承知の上です。(今回はこのサイト上でどのくらいのことができて何を伝えられそうか知るための試作ですので…)
先を読んでみるよ!という方は、この部分の音声を(もう一度)聞いてみてください。
*ここから先は機械で合成した音声です。
オーケストラではありますが、この部分で演奏されている楽器は5種類6パートのみです。
6パートのみ…と言っても…それぞれが別のメロディーを音を演奏していますので、すべての楽器がどんな音を出しているか一度にそれぞれ別に聞き取れるよ!という方は…いらっしゃったらこの先を読む必要はありません(笑)
さて、それらが重なって聞こえてはいるわけですが、どうでしょうか、こんなメロディとして聞こえてきませんか?(やや音量注意です)
聞こえますよね?どうやら弦楽器、ヴァイオリンパートが演奏しているのかな?と思った方もいらっしゃるでしょう。先頭の動画でも弦楽器群が演奏している様子が見て取れましたよね。
ではここで、オーケストラの楽譜がどうなっているのかを見てみましょう。
*この部分で演奏していない楽器はすべて省いてあります
*なんだこのト音記号でもヘ音記号でもないやつは?!という方は…ハ音記号というものなんですが、ここではお気になさらなくて大丈夫です(楽譜には様々な要素が含まれるので機会があれば解説したいと思います)
それぞれの楽器を単独で聞くとこんな感じ。
スコアと同じ順番で、上からフルート、バスーン、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロです。(こちらもやや音量注意…特にフルートとバスーンは最初が休符なため数秒の無音状態がございますのでお気を付けください)
もうお気づきでしょうか…実は、聞こえてくるメロディを演奏しているパートが一つもないのです!
これは一体どういうことなのでしょうか?
私たちに聞こえてくるあのメロディの実態は…こうなっています。
*画面に出る〇印にご注目ください
〇でマークされた音をつなげて聴いているというか、つながって聞こえてきているというか、そういうことなんです。
なぜこのように「つぎはぎ」な状態を私たちは普通に一つのメロディとして聞き取ってしまっているのかというと、これらがそれぞれの楽器が奏している音の中で最高音だからです。最高音は単純に言って耳に入りやすい。なのでそれらをつなげて聞いているわけです。
ちなみに後でこの部分が再現されるときには、聞こえる通りのメロディを第1ヴァイオリンが奏します。
その近辺の譜面はもう少しだけ複雑に見えると思いますが、せっかくなので?ご覧くださいませ!
このページにはスコアとして2段記されており、二本の斜線の下が2段目で、そこに薄い赤でマークしてある部分がありますね。これが第1ヴァイオリンによって奏される例のメロディです。
ページ先頭の動画では37:55からがこのページの先頭で、薄い赤で記した部分は38:25あたりです。開始時間指定のリンクはこちら。
こういった事柄をどう解釈するかは、聴く皆さんの自由です。
単に面白いからやってみただけかもしれません。聞いてる人には関係のないこんな仕組みを組み込むなんてナンセンスだと思う方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、この楽曲を作曲したころに作曲家の身に何が起きたかに結び付けて解釈をすることもできます。
「私たちがとらえたと思うものは幻で実体がない」といった解釈も可能ですし、社会や哲学などを反映させて理解することもできるでしょう。
でも、どうでしょうか。楽譜をちらっと見てみることで、聞くだけではなかなか踏み入れない部分って、面白くないですか?
私には面白くて、自分の楽器が関与しないこういう楽曲であっても、うわあなんかすごいな…と日々驚いているんですが…皆さんにも何が面白いのか少しでも伝わったなら幸いです。